Rの日常 Ⅲ
Rさんは、ご自身の感情をとても正直に表現されます。
娘さんが訪れてくれることを何よりの楽しみにされ、
「はよ、来てほしい」
「来てくれたら、嬉しい」
先日、初めてのひ孫さんに会えて、そのお話をされているだけで涙ぐんでおられました。
よほど嬉しかったのでしょう。
喜びの感情は、何度でも繰り返してもいいと思いますから、しつこいくらいに「良かったですね。良かったね~。」と共感しました。
娘さん、ご家族さんは毎週必ずお見えになられているようです。
ご家族ですから、当たり前のことかもしれませんが、やや遠方から、毎週、何年にもわたり…
頭の下がる思いです。
ところが、Rさんには「一日千秋」の思いなのでしょうか。
曜日の感覚、時間経過の感覚が、やや曖昧な部分がありますから、4~5日経過すると
「全然、来てくれへん!」となります。
すると、その感情を表現したいからか、口を極めて、娘さん方への罵倒が始まります。
とは言え、Rさんは元々とても上品な「お嬢様」だと感じていますので、かわいらしく、それでも考えつくだけの「悪いコトバ」を並べられます。
「先週、来てくれたでしょう?」と、たしなめても
「そんなん、知らん。忘れた。」と、取り付く島もなく、だんだんと負の感情が増幅されてしまい、興奮してかえって「火に油」。
とある日、今日は穏やかに終われそうだなと思っていても、帰り間際になって
「もうちょっと、ここの首揉んで」
「背中が、やっぱりしんどいのよ…」
「ベッド(のシーツを)直して」
「そこの服をとって」
「エアコンは何度に(設定)してくれてるの」
「(今度いつ来るのか)カレンダーに書いといて。ほんで今日の日付はバツしといて。斜めの線やなくてバツしといて。」
次から次へと、「あれして、これして」が始まります。
このあたりを、丁寧に対処しないと、イライラしてこられて「大声」を聞くことになります。
Rさんの、不安と寂しさが、私を、自分に関わる人を、引き留めようとしておられるのでしょう。
こちらが、少々時間に焦っているときほど、それが伝わるのか、「引き留め」は強い…
そもそも
施術には、患者さんとのご挨拶から始まり、「終わりました。」までに、流れ、リズムがあります。
限られた時間の中で、「やるべきこと」があります。
さらには、ある程度の結果も出したいのです。「あぁ、楽になった。」が、ほしい…
ある程度の主導権を握って、患者さんをリードして、症状の改善を図るのは、施術者としての責任だと考えています。
ところが、Rさんには、それが押し付けになりがちなのか
「アンタは、いっつも命令ばかりする!」
と、おこられたことがありました。
Rさんには、私の「やるべきこと」よりも、その寂しさや不安感に「寄り添う」ことが必要なんだと改めて思い
ここ何回かの施術が、穏やかにできています。
時に、笑いながらの昔話を 交えながら…
また、報告します。