Rの日常 Ⅴ
台風がいくつもやってきて、長らく暑かった今夏も急に涼しくなってきましたね。
Rさんは、最近は穏やかな日常を送られているようです。
夜中に不安になって、ナースコールを何度も何度も押されて、そのうち相手にされなくなり、不安がより募って叫びだす…
ということも、少なくなってきているとのこと。
何がRさんを穏やかにさせているのか?
一つ思い当たるのは、初曾孫さんの写真です。
愛くるしい表情のアップの写真と、お孫さんご夫婦とRさんも交えた4人での写真が、最近飾られました。
それはそれはとても喜ばれて、何度も何度も
「かわいいやろう?」
「かわいいですねぇ」
を繰り返します。
赤ちゃんの力はすごいですね。
不機嫌になりそうなRさんを
孤独の闇に入り込んでいきそうなRさんを
引き留めてくれるようです。
赤ちゃんが一人その場にいてくれるだけで、周りは和やかになり、会話も生まれます。
写真一枚で、ひぃおばあちゃんの気持ちをなだめてしまうのですから、赤ちゃんの力はすごいと思います。
Rさんの負の感情を薄めるためには、何をすればいいのか?
負(マイナス)の感情、
不安・恐怖・劣等感・優越感・後悔・不満・恨み・憎しみ・苦しみ・悲しみ・怒り・嫌悪・絶望・軽蔑・恥・嫉妬・罪悪感・殺意
とコトバにするだけで、不快になってきますね。
不快もマイナスか…
正(プラス)の感情
安心・勇気・期待・感謝・愉快・満足・喜び・笑い・愛情・幸福・希望・信頼・共感…
ちょっと、宗教のかおりがしてきますね
マイナスの感情がわくのを、止めるのはとても難しい気がします。
「腹立つ」人に「腹立てるな」と伝えても、なかなか難しい。
ただ、Rさんの心象風景を一つの画面として、マイナスに塗り固められているときに、プラスの色を上塗りしてみようと。
「曾孫さんの写真」
「とても優しかった、Rさんのお父さんやお兄さんの思い出」
「海外旅行のエピソード」
などなど…
全く受け付けられないときもありましたが、
話題を変えていくこと、何とかお話を聞きだすようにしていると、
元々話好きで、誰かに聞いてもらいたいRさんですから、「のって」くると話が止まらなくなります。
そして、気がつくとマイナスの色は随分と薄まっています。
それと同時に、身体の不快な症状を忘れてしまわれることもあります。
ただ先日、いつものように始めは機嫌悪く、何かと文句を並べつつ、
なだめながら施術をしているうちに、昔話をふっていくと海外旅行をあちこち連れて行ってもらった話題になり、楽しかったお話を途切れることなくされた後で
「ああ、しんどぉ!!」
「喋り疲れたわ~。 にぃちゃん、何しに来たん?」
今宵も穏やかな時間が流れますように。